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2020.05.29

好きなことに振り切る勇気を!JINS CEO・田中仁さんが目指す、メガネと企業の未来

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目次

様々なヒット商品を生み出し続けているアイウエアブランド「JINS(ジンズ)」の田中仁さん。ユニバーサルマナー検定の導入を進めるなど、多様性へも目を向けてビジネスを展開されています。さらに広がるメガネの可能性、そして、田中さんの考える組織のあり方について、お話を伺いました。

PROFILE
話す人

田中 仁(たなか ひとし)
田中 仁(たなか ひとし)

1963年群馬県生まれ。1988年株式会社ジェイアイエヌ(現:株式会社ジンズ)を設立し、2001年アイウエア事業「JINS」を開始。2013年東京証券取引所第一部に上場。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。


INTERVIEWER
聞く人

垣内 俊哉(かきうち としや)
垣内 俊哉(かきうち としや)

1989年に愛知県安城市で生まれ、岐阜県中津川市で育つ。生まれつき骨が脆く折れやすいため、車いすで生活を送る。障害を価値に変える「バリアバリュー」を提唱し、大学在学中に株式会社ミライロを設立。


メガネをしないのは、服を着ないのと同じ?生活をより良く変えるものへ

垣内
垣内
田中さんには、JINS社員の皆さんと一緒に、2019年3月にユニバーサルマナー検定3級(高齢者や障害者への適切なサポート方法を学ぶ講座)を取得いただきましたね!講義はいかがでしたか?
印象深かったのは「車いすを使用されている方がカフェ店内にいる時、座る場所の椅子を取り外すのではなく、車いすから降りて椅子に座ることを望んでいる場合もある」という学びでした。相手の思いに寄り添っているつもりでいることが、勘違いしていることもあるのだと思いました。
田中さん
垣内
垣内
その学びは、JINSさんの活動に役立てそうでしょうか?
そうですね。「障害のあるお客さまは、きっとこうだろう」という思い込みをまず払拭しなければ、満足してもらえないなと思いました。これは障害に関わらずですが。
田中さん
垣内
垣内
私も普段からJINSさんには足を運びますが、ほとんどの店舗は車いすで問題なく入ることができます。メガネ屋さんってディスプレイの関係で、棚が多くて通路が狭いイメージもあるのですが、これは最初からある程度想定して設計されているんですか?
はい。昔は通路幅が80cmくらいの狭い店舗もあったのですが、それだとベビーカーや車いすのお客さまが通りづらいので、今は最低120cmくらいを確保するようにしています。
田中さん
垣内
垣内
渋谷パルコに新しくオープンした「JINS渋谷パルコ店」では、メガネをかけたままバーチャル試着できるシステムもあって、どんどん店舗も進化されていますよね。
店舗の進化とともに、いずれは自宅やオフィスなど、どこにいてもメガネを買えるようにしたいと考えています。今はアプリやWEBサイトでバーチャル試着・購入し、保証書を受け取ることができますが、ゆくゆくは接客サービスも提供できるようにしたいと思っています。
田中さん
垣内
垣内
接客サービスというと?
似合うかどうかを判定するのはAIが対応しつつあるので、あとは、かけ心地の確認・調整などですね。調整の必要がないくらい、誰にとってもかけ心地の良いメガネを作ることができれば、これもクリアできます。
田中さん
垣内
垣内
なるほど。移動に不安がある障害のある人にとっても、店舗に行かなくても良いというのはすごく便利だと思います!
そうですね。移動に不安がなくても、たとえば買い物する時間がもったいない!というお客さまもいらっしゃるので、これからはいかにオンライン上で手軽に済ませることができるかだと思います。
田中さん
垣内
垣内
日経BP社から発行されている「振り切る勇気―メガネを変えるJINSの挑戦」を読みました。2009年からは「安価で高品質なメガネの民主化」、2011年からは「JINS SCREEN(旧JINS PC)など機能性アイウエアの拡充」、そして2019年は「近視進行抑制メガネ型医療機器の開発による近視進行の抑制」と、大胆な戦略を掲げて展開されていますね。これからメガネはどう変わるんでしょうか?
メガネは視力を矯正するものから、人の生活をより豊かにするものへ変わっていきます。たとえば服も一緒です。10万年前、人類の先祖は服なんて着てませんでしたよね。
田中さん
垣内
垣内
そうですね(笑)。
それが、暑さや寒さから身を守るために布を纏うようになりました。服という道具だったものが、今や「ファッション」になっているわけです。メガネも、もともとは視力矯正のための道具でしたが、これからはファッションになり、目の能力を高めたり守ったりするツールになり、情報を得るデバイスにもなっていきますよ。
田中さん
垣内
垣内
メガネのファッション性はどんどん高まっていっていますが、最近はスマートグラスも出てきましたからね。スマホの代わりがメガネになる未来も近そうです。
私はね、メガネをしていないと恥ずかしくなる時代がくると思うのです。メガネをかけていないっていうのは、洋服を着ていないのと同じだと。
田中さん
垣内
垣内
通りすがりでメガネをかけてない人を見つけると、「えっ!?あの人、メガネかけてないじゃん!」ってビックリしてしまう未来がくるんですね。
勝手に私が思ってるだけですが(笑)。 でも私はもう、メガネを外して出かけるとそわそわするようになりました。昔はメガネをかけていなかったのに、今はメガネをかけていた方が顔つきがシャキッと締まるのです。
田中さん
垣内
垣内
ああ、わかります!私も最近メガネをかけているんですが、家に忘れるとそわそわします。これはファッションとしてのメガネがもう根づいてるってことですね。
そうです。これからは、目を守るだけではなく、目の代わりになる機能をメガネが担っていくと思います。世界のあらゆるテック企業がこれからどんどん、スマートグラスを発表していくと思いますが、JINSはそのプラットフォームとして活躍できると考えています。
田中さん
垣内
垣内
スマートグラスのプラットフォームですか?
テック企業が発表するスマートグラスは、デザインが決まっている単一のデバイスですよね。でもメガネには、かけ心地とファッション性も必要です。クオリティの高いレンズを安価に用意でき、デザインにもこだわっているJINSだからこそ、スマートグラスの「メガネ本体」として貢献できると思っています。
田中さん
垣内
垣内
それはいいですね!車いすに乗っていると、移動しながらスマホを取り出すことは難しいし、車いすにカーナビのように取り付けるのは格好悪くて敬遠していたので、スマートグラスの普及は心待ちにしています。JINSさんのメガネのように、デザインがかっこいいなら、なおさら買いたくなります。

メガネが社会の課題を解決する!企業の責任とは

垣内
垣内
近視進行抑制メガネ型医療機器の開発に着手し、近視の進行を抑制することを目指していると聞き、びっくりしました。メガネが発明される前、目が見えづらいというのは障害であったとも思いますが、この障害をも減らしていく新しいアプローチですよね。
はい。慶應義塾大学医学部の医師の方々にご協力いただき、エビデンスもしっかりと準備しています。今も研究を一緒に進めています。
田中さん
垣内
垣内
ブルーライトをカットする「JINS SCREEN」も、産学連携で品質を保証されたそうですね。
「JINS SCREEN」が発表された当時は同じようなコンセプトの商品が、他社からもたくさん発売されて、ブルーライトカットがブームになりました。今回の研究も、メガネというマーケット全体に良い影響を与えていきたいです。
田中さん
垣内
垣内
品質を保証するエビデンスを作るというのは、消費者からすると安心ですが、コストも時間もかかるんじゃないでしょうか。
非常にかかります。けれども、やる必要があると思っています。従来のメガネのマーケットは、本当か嘘かわからない効果を謳うものが当たり前に売られていることもありました。JINSは、きちんとしたエビデンスに基づいた商品開発を行っていますので、コストや時間はかかりますが、その分、社員が自信を持って売れるものができています。
田中さん
垣内
垣内
協力をする医療機関は、前向きに向き合ってくれるところが多いですか?
「儲けたい」という理由だけであれば難しいですが、ビジョンや志がしっかりあると、協力してくださるところが多い印象です。JINSが、お客さまの眼の健康へ真摯に向き合い、眼病やドライアイなどの不調を解決していきたいという姿勢を持ち続けているから、好意的に力を貸してくれました。
田中さん
垣内
垣内
2019年からJINSさんは、視覚障害者向けのスマートグラス「オトングラス」への事業協力も始められていますね。障害のある人も、眼に対する不安や不便を感じているので、この発表はとても嬉しく思いました。
エビデンスだけではなく、これからは環境保全にも力を入れていかなければいけません。JINSは今売上本数業界No.1のシェアですが、No.1だからこその責任があります。例えば、メガネのフレームはプラスチックですが、これは環境を汚染します。直近のダボス会議でも、プラスチックによる環境汚染が大きく取り上げられていました。
田中さん
垣内
垣内
それもJINSさんで解決していく予定ですか?
店舗でメガネの回収を行っています。2011年にメガネ業界で初めて、不要なメガネを回収する試みを始めました。けれども、もっとできることがあると思っていて、たとえば自分たちだけで売ったメガネを回収し、ペレット化し、またメガネにするというアップサイクルを作れないかと思っています。
田中さん
垣内
垣内
壮大ですね。これもまた、コストと時間がかかりそうですが、それでも取り組むのがJINSさんの責任だと。
これからの企業は、社会の課題を解決するために存在すべきです。その手法としてビジネスがある、くらいの位置づけでなければ生き残れないと思っています。儲けたいだけで社会のことを考えない企業から商品を買う人は、どんどん少なくなってくるはずですから。
田中さん
垣内
垣内
そのように気づいたのはなぜですか?
真贋を見極める目が、若い人を中心にどんどん備わってきていると思いました。JINSの社員は平均年齢が29歳前後と若い企業ですが、社員と話していてもよくわかります。
田中さん

好きなことに振り切れば、企業も人も続けられる

持続可能を目指すというのは環境だけではなく、人にも言えることだと思っています。
田中さん

田中さんは、働きたいと思う人が集まってくる企業は、これまでの主従を重視する組織ではなく、個人の自己実現のプロセスを重視する企業に変わってくるはずだと予想します。

働きたいと思える魅力が、どんどん変わってきていると思うのです。働き方、社会への価値創出、所得、条件……これらの魅力を企業としてバランスよく高めていくためには、普通のことをしているだけでは追いつきません。抜本的に変わらないと。
田中さん
垣内
垣内
少子高齢化で働き手が少なくなってくるからこそ、企業が知恵を絞らなければならない時代になってきているんですね。

2020年1月に発売された「WWDジャパン」で発表された「ファッション業界働きがいのある企業ランキング」では、JINSさんが「20代成長環境部門」で第一位に輝きました。
完全実力主義を採用し、若者が活躍し成長できる環境づくりを進める仕組みが評価されたとのことです。

垣内
垣内
ユニバーサルマナー検定の講師を務めた時、御社の若い社員の皆さんの活力に圧倒されました。田中さんは普段、どんなメッセージを社内で伝えているんですか?
5つ、必ず伝えています。1つ目は「自分の好きなことを見つけてください」。好きなことを土俵に出来れば、続きます。2つ目は「その好きなことを実行してください」。3つ目は「夢は言葉にして、自分の潜在意識に働きかけてください」。4つ目は「困難から逃げないでください」。好きなことであれば、困難にも立ち向かえる力がわくと思うのです。5つ目はなんといっても「感謝しましょう」。人生は一人で生きるのではなく、他人と織りなす物語ですから、と。
田中さん
垣内
垣内
田中さんは、起業するまでメガネのことが大好きだったわけではないけど、今は大好きになったんですね。田中さんも、好きなことを見つけた人ですか?
そうです。好きなことってみんな、主観で見つけようとするのですが、食わず嫌いをしていると見つからないのです。色んな世界を知り、チャレンジをしていくと、好きなことが見つかると思います。
田中さん
垣内
垣内
ご著書を読んでいても、たくさんのチャレンジをされていたのがわかります。
その本に書いてあるチャレンジはまだまだ甘いですね(笑)。
田中さん
垣内
垣内
えっ!これだけでもかなり怒涛の連続で、疾走感がありましたが……。
当時は私の器がまだまだ小さかったのです。ですから、たいしたチャレンジでなくても、大きく感じて、辛かった。相対的なのですね。今は、それなりの苦難を経験してきたので、大きなチャレンジも楽しく感じることができます。
田中さん
垣内
垣内
苦難というと、どんなことが思い浮かびますか?
そうですね……。以前は「上場企業の社長」として、在るべき姿を追求し、近づこうとしていました。でもそれは結局、良い格好をしているだけなのです。誰かを真似るというのは、自分を殺すわけですから、そこに成長はありません。
田中さん
垣内
垣内
上場企業の社長はこうあらなければならい、というイメージは強いですからね。考えれば考えるほど、息苦しくなると思います。田中さんはどんな社長が良いと思いますか?
リーダーは、基本的に自分がやりたいことをやらなければならないと思っています。外からどんなことを言われても、持論を思い切り展開すべきです。上場企業の社長像に近づくよりも、その人らしさを出した方が、好きになってもらえるように感じます。もし私が今も上場企業の社長らしく振る舞っていたら、地域への社会貢献なんてできないと思うのです。
田中さん

田中さんは、故郷・群馬県前橋市の活性化を目指し、起業支援やまちづくりに奔走しています。2014年、群馬県内での地域活性化活動を目的に田中仁財団を設立。群馬での起業や新事業創出を目指す社会人や学生が登壇する「群馬イノベーションアワード」の運営など、活動は多岐に渡ります。

前橋市の皆さんと仕事をしている時に、不思議なことに、JINSのビジネスを発展させるアイデアが出たりするのです。その逆もあって。良い刺激になっていますよ。
田中さん
垣内
垣内
最後に、これは皆さんにお伺いしているのですが、田中さんが苦手なことってなんですか?
苦手なことですか……記憶することですね。自分が言っていたことをたまに忘れてしまったりします。でも「これだけは許せない!」と思ったことや、ある一定の言葉だけはずーっと覚えているのです。社員も「そんなこと覚えてたんですか?」ってびっくりするくらい。(笑)興味のあることはずっと覚えていて、集中もできるんですね、きっと。
田中さん
垣内
垣内
それは子どもの頃からですか?
いえ、子どもの頃は学校の通知表に「集中力がない」と書かれていました。学校の勉強に興味がなかった。先生の期待に答えようと、嫌いなことをやり続けていたら、きっとやっていけなかったと思います。好きなことに振り切っているから、ずっと努力を続けてこれて、今があります。
田中さん
垣内
垣内
好きなことを見つけるというのは、これから社会に出ていく若い人たちにはぜひ、心に留めてもらいたいですね。ありがとうございました!
メガネを変えるJ!NSの挑戦。驚異のV字回復を果たし、350万本超の「JINS PC」など画期的なヒットを次々生みだす秘訣を明かす。 人々の人生を豊かにすること、世界一イノベーティブなアイウエア企業を目指す田中仁さんとJINSの挑戦は、勇気と元気を与えてくれる。

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